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情報系を学びたい学生は高専に進学すべきか?

高専の情報系出身者が,あくまで「高専全体」ではなく,「高専の情報系」という限られた観点のみから話をする.


世間一般的に高専の認知度はそこまで高くない.
今まで自分自身も,自己紹介で「高専生です.」と名乗ると周囲の友人や普通の大人からは「専門?」と聞き返されるのが頻繁にあった.
しかし,世間一般の認知が低いからと言って,大学へ進学出来ないという事も無ければ就職が出来ないという事も全くない.
現に自分も,高専の情報系を卒業し,今は大学に編入している.


www.nikkan.co.jp
最近ではこんなニュースも話題になった.


少し話がそれるが,
高専では,就職はワイルドカードを使っていると言っても過言でない.
これはおそらく殆どの高専がそうであり,高専の卒業者は大手のメーカに勤めていたり,大手のインフラ系に勤めているケースが少なくない.
また,情報系に限った話ではなく,これは一般的な高専生の就職先のケースとして挙げられるものである.
(しかし,「安く雇える即戦力」として扱われるケースも多いと聞く.この辺りの本当の実態はよく分からない.)



本題に戻る.
最近,「情報系をやりたいので高専に入りたい.」という相談を中学生やその保護者さんから受ける事があった.
この場では,中学生が安易に情報系に道を絞ってしまう危険性と,社会的な「情報系の」高専生の評価という2つの観点から進学すべきか否かを考えたい.


情報系を学びたいという中学生でも,大きく分けて3パターンが存在すると思っている.

1. 「ぼんやりと情報系に興味がある」という方
2. 「いずれ情報系を学びたいと思っており,大学進学後に学ぶよりも高専で学んだ方が3年早く得できるのでは」という方
3. 「バリバリプログラムが書ける猛者達が集まっているんだろう…俺はここでやっていけるのだろうか…」と武者震いしている方

「ぼんやりと情報系に興味がある」という方

このパターンが正直一番危険だと思っている.
下手な事は言わないのでやめた方が良い.
学科にも寄るだろうが,大体の高専は1年にしてプログラミングの実習が始まる.
1年生,2年生にして大体のプログラムが書けるようなカリキュラムになっているが,このパターンの子は低学年にして挫折する事が多いと思う.
「そもそも自分はプログラムを書くのに向いていない」と感じる子が低学年にして大多数を占めていた.
例えば何かを制作する自由課題が出た時に,この向き不向きは顕著に表れる.
向いている子・強い興味関心があった子の方が上手く結果を出せるのは当然であり,何となく興味があって進学した子は強い嫌悪感を抱いて課題に取り組むことが多い.
また,この手の課題は低学年に始まり,卒業するまで何らかの制作は行い続ける必要がある.
興味を失くしてしまった子は制作するのも他人任せであったり,嫌々取り組んでいる子も少なくなかった.

これはあくまで経験であるが,卒業時までに情報系に強い興味関心を持って取り組んでいたのは40人中10人にも満たなかったと思う.
ぼんやりとした興味関心が,強い興味関心に変わるのは,環境に加えて自分自身が能動的に取り組む必要があるので博打的要素が強い.
普通高校に進学してから,自分自身でその分野を調べ,それでも更に興味が湧くようであれば大学からでも遅くないと思っている.

「いずれ情報系を学びたいと思っており,大学進学後に学ぶよりも高専で学んだ方が3年早く得できるのでは」という方

このパターンの子は是非高専に来て勉強すべきだと思う.
情報系を学びたいと考えている以上,何かしら情報系に興味があるはずなので,その興味関心は高専に進学すればきっと広がると思う.

一つ注意すべきパターンの子が「自分でゲームを作りたい」という理由で高専に進学してくる子だ.(今こそまるで興味が無くなってしまったが,当時はそうだった.)
高専オープンキャンパスなどで先輩が作った凄いゲームを見て「カッケ―!」と思って進学する子は要注意.
授業でゲームは作らない.
大体作っている人は能動的に,あくまで自主的に作っている人であり,「授業でゲーム作りたい」という受動的な考えだと入ってからギャップに後悔する.
しかし,同じような志を持って高専に進学してくる人は何故か多い.
高専はそういった観点から観ると,人生の早い時期に同じ志を持つ仲間と出会えるというメリットもあるので良いと思う.
また,情報系に興味がある以上,何かしらの他の情報分野に使える技術は学べる.
ゲームは作れなくとも,ゲームを作る為の基礎は理論的に学ぶことができると思っている.

「バリバリプログラムが書ける猛者達が集まっているんだろう…俺はここでやっていけるのだろうか…」と武者震いしている方

そんな期待はしない方が良い.
大体の人は入学して初めてプログラミングをする子が多いので,そんな強い人は全体の1割未満と考えてよい.
同じ猛者を求める人は,高専プロコンに参加するか,ロボコンに参加すると良いと思う.
また,最近ではIT系の企業がエンジニアとしてアルバイトを雇ってくれるケースも多い.そういったコミュニティから仲間を作れば不満は感じにくいのではないだろうか.
(それでも先述したように,同じクラス内で能動的に取り組む人はせいぜい10人程度と考えてよいので,クラスでの不満は募るかもしれない.これは仕方ない.)

高専の授業は,出来る人に足を揃えず,出来ない人に足を揃えて行う授業が殆どだ.(それでも留年率は5年間で1クラス8人が消えると考えてよい 厳しい世界)
そのような環境の中で,出来る人が授業に対して満足できることは少ないかもしれない.
しかし,何故か出来る人に限って留年する率が高いのも事実である.
自分が見てきた,聞いてきた殆どのケースは,「自分のやりたい事に没頭しすぎて授業に出ない/テスト勉強をしない」ために留年するようだ.
普通高校でも大学に進学すれば情報系の勉強は出来るうえ,早い段階で闇落ちするよりは高専に進学しないで適度な束縛の中で勉強をした方が親孝行かもしれない.

ただ,これは極端なケースであり,実際に優秀で,能動的に勉強をし,かつ自分の趣味のプログラミングも両立して行っている人も存在した.
高専は,普通高校と比較して比べ物にならないくらい自由なので,自由をはき違えずに有効活用すればきっと高専生活は良いものになるのではないだろうか.


社会的な評価のこと

IT系に限っては高専の情報系出身の学生の評価は高いと思う.
IPA主催のセキュリティキャンプでの関わりをはじめ,今年は計4社インターンに参加したが,どの会社でも高専生の評価は高かった.
自虐的な高専生もよく見るが,このような評価にはもっと自信を持った方が良いと思う.
(その分期待も大きいので,しっかり応えられる人間にならねば とも感じた.)

また,大学的にも高専出身の学生の評価は高い様に感じる.
大学に関しては,色々な大学の話を聞く限り,内部生よりも編入生の方が出来る割合が大きいという話を頻繁に耳にする.
学部2年の年齢で殆どの高専生が卒業論文に着手しており,そういった意味での専門性も高いと感じる.
(他の内部生より始めるのが早いのだから当たり前といえば当たり前かもしれない. 中学生にして高専に入る覚悟を持っているのだから当たり前と言わずに評価されるべきとも思う.)


自分のこと

私も高専出身であり,中学生の頃は2番目のパターンに該当している人物であった.
しかし,早々に情報系の分野に挫折し,高専が嫌になっていた時期もあった.
結果的に今は好きな学問を見つけ,それを追求しようと日々取り組んでいる.
自分自身が高専1年生に戻るとしたら,「能動的に,色々な事に興味を持ってほしい」.
学問である以上,何かしらの興味があれば,そこから爆発的に成長するケースも少なくない.
結局,自分が本当に興味がある事に出会ったのは高専4年になってからであった.
高専の先生方は親身に相談に乗ってくださるし,友人も皆良い人達だった.
もう戻りたいとも思わないが,高専という環境下で情報系を学べたのは本当に良かったと感じている.
高専は低学年と高学年で印象が変わるところだと思う.
より専門性が問われるのは高学年になってからなので,どれだけ低学年の間に色々な事に興味を持てるかが重要だと本当に感じている.


色々なご意見お待ちしております.